▼ 鍛造の歴史 世界編

■ 鍛造の生い立ち

 鍛造の始まりは人類が文字を知る以前であり、遺跡の出土品からその年代が推定されるのみです。
 6000年前 エジプトやメソポタミアで自然産の金、銀、銅などの加工(鍛造)されたものがあると言われています。
 5500年前 メソポタミアの遺跡で鋳型や銅の斧が出土し世界最古の鋳物と言われています。
 4000年前 ようやく高温を手に入れた人類は、鉄を使い出しました。鋳造は小アジアの人達が始めたと言われています。
 2500年前 中国に鉄製農具が普及。
 1700年前 弥生時代、日本にようやく大陸から技術が伝来し、弥生時代後期から青銅の鋳造品や鉄の鍛造品が現れています。 
 「鉄時代」を迎えた地域は農耕その他の生産性が飛躍的に向上し、ひいては文明の発展を促し、古代国家成立の重要な動機になりました。そして人類は 数学、科学に目を向け、文学、哲学にも関心を持つようになりました。

 


▼ 鍛造の歴史 日本編

■ 日本の鍛造の生い立ち

 古事記や日本書紀によると、4世紀当時、親交のあった百済 から応神天皇の要請により、卓素という鍛人(鍛造技術者・鍛冶師)が来朝し、韓鍛冶の法を伝えたとあります。
 その後、新羅が百済に侵入し日本は百済救援に出兵したが及ばず、任那の日本府も新羅に滅ぼされ、百済からは大量の人々が日本に移住し、「韓鍛冶」の帰化も相次ぎました。
 7世紀前半の元正天皇の頃には、韓鍛冶は近江をはじめ諸国に集落を造り、韓鍛冶百島など127人に姓を賜っています。鍛造の技術はこれらの人々によって広められました。
 初めは輸入していた原料の鉄も、やがて国内で砂鉄や磁鉄鉱などから製鉄が出来るようになりました。 また、弥生時代は小さな槍鉋や鏃のようなものしか作れませんでしたが古墳時代には鎌や刀など大型の鍛造が出来るようになっています。
 8世紀初頭の大宝律令の軍防令によると、兵士は武器のほか鍬、斧、小斧、鎌、金箸などの鍛造した農具を持たねばなりませんでした。
 この頃、イナゴの被害や風害が相次ぎ、税収は大きく落ち込みました。その後も度々凶作に見舞われ、鍛造農具の量産は緊急事でした。
 また、度々の戦乱に刀剣などの武器も、平安期から非常に発達し、その技術は鋏、包丁、剃刀などの日用具や工作用刃物鍛冶の発達を促しました。
 16世紀に鉄砲がポルトガルから伝来したとき、短期間にその製造技術を獲得したのも、それまでの鍛造技術が発達していたことを示しています。
 金敷と手鎚で鍛造加工していた時代から、機械による鍛造が始まったのは、はっきりしませんが明治維新前の頃と言われています。
 その後、生産量は徐々に拡大し、戦争中にはピークに達したが、まだ生産性は先進国に比べて格段の差がありました。それも敗戦により壊滅的な打撃を受けました。そして我々日本人はその絶望的といえる状況から立ち直り、品質、生産性の両面で、世界のトップクラスとの肩を並べるようになりました。

 

■ 鍛造業の歴史と課題

(1)我が国の鍛造の歴史

 鍛造の歴史を概観すると、1950年代は欧米技術の導入期で、1960年代はシステムの日本化期、1970年代は需要拡大期、1980年代は本格需要期で量を追い、質を求めた時代、1990年代はインテリジェントフォ−ジの時代(鍛造の情報化)、コストダウン、切削品の鍛造化の時代でした。そして、21世紀は質+付加価値、IT化、技術の特長化の時代です。
 外国技術の導入から始まった我が国の鍛造業界ですが、気がつくと現時点では技術面で世界のトップを走っています。従って、最近の精密化によるコストダウンで、インテリジェント化、IT化でも対応するために手本のない時代になっています。これらを具現化するには、ハ−ド面、ソフト面で今までにない技術が要求されています。このため、新しい鍛造加工のための研究開発が重要になっています。

(2)国際競争への対応

 電力・原材料・労務コスト等の製造コストが高い我が国の製品・組立部品メ−カ−は、高精度部品を速く、安価に製造しなければ国際競争には打ち勝つことができません。
 鍛造は機械産業を支える重要な生産技術です。競争力のある鍛造品を生むには、長年の経験に加え、多くの加工関連先端技術や自動化技術、検査技術、目的にあった良質な鍛造素材の開発、鍛造品の精度と寿命を左右する型材料の開発、加工技術及び熱処理と被膜処理、最適な潤滑システムの開発など周辺技術を含む総合システムを構築できる環境が必要です。客観的に考えて我が国がこの意味で高度鍛造品を生産するのに最も適した環境にあります。  
 鍛造加工は、経験(熟練)と勘が支配する世界であり続けました。しかし、今日部品の統合による複雑形状の鍛造品への対応、自動車のエンジン出力向上や運転性能向上の要求、軽量化への要求など、ますます加工上厳しい要求が求められています。これらの要求に鍛造業として対応していかないとその存立すら危ぶまれることにもなり、そのためにも鍛造プロセスを科学的に検討する必要が出てきました。 
 コスト競争力を得るには鍛造プロセス全体を見ての技術改善が必要です。従って、鍛造品設計技術や加工工程設計技術のみならず、型技術、材料技術、鍛造周辺設備技術などの総合的開発能力が競争力と関係してきます。   
 鍛造技術の改善・進歩は、日々の技術改善努力や問題点の把握を行ない、 これらをデ−タべ−ス化し、設計の改善につなげることによって、鍛造品の高精度化の推進、ネットシェイプ成形法の開発、鍛造品欠陥の防止、コスト低減などを推進することができます。
 ユ−ザ−は、鍛造品の特徴である高い靭性と強度を生かし、新しい製品を開拓することによって、組立部品の性能を向上でき、エネルギ−の節約、安全性の改善及びコストの削減につなげられます。
 鍛造品は、最も強度に優れ、成形度が高く、安価で、安心して使用できるため、機能部品として欠かせない機械工業の基礎部品であるのです。



▼ 鍛造とは?

■ 鍛造とは?

 「タンゾウ」という言葉を皆さんは、あまり耳にしたことがないと思います。鍛造とは字のごとく「鍛えて造る」 ということですが、「鉄は熱いうちに打て」と若者の教育論にも使うように、鉄を高温にしてたたくことにより鍛えると同時に、任意の形に形状を変えることを言います。
 身近なもので例えてみると、温かいご飯を手で握ると、「おむすび」という任意の形状の固体になりますが、落としたりすると簡単にバラバラになってしまいます。しかし同じお米でも蒸して臼と杵でつくことによって「お餅」という固体になります。これは落としたぐらいではバラバラになったりしません。
 このようにたたくということで固体の中の隙間をなくして一つの強い固体にし、また熱いうちであれば容易に色々な形にも変えることができるということが分かってもらえると思います。
 これと同じように金属塊をたたく(鍛錬)とによって鋳造時に生じた泡・ガス(気孔)を圧着させ、結晶粒を微細化し、組織を改良し機械的性質を改善し、同時に目的の形状を作り、機械加工を省略もしくはその工数を減らすことが<鍛造の目的>なのです。
   == 鉄は熱いうちに打て ==
 鉄は打ってはじめて強くなることは昔から知られており、「鍛冶」または「火造り」
と言われていた。現在の「鍛造」である。

 

■ 鍛造品の特徴

鍛造品は機械構造部品の基礎である。

その主な特徴は

1) 材料の節約。製品の最終形状に近い形状、寸法に成形される。
2) 工作機械による切削工程が省略または節減できる。
3) 切削加工の困難な形状のものが量産できる。
4) 組織が緻密となり、内部欠陥がない。
5) 引張り強さ、硬さなどの機械的性質のばらつきが少ない。
6) 製品形状に沿ったメタルフロー(鍛流線)が得られる。 
7) 寸法のばらつきが少ない。

 以上のような多くの特徴をもつ鍛造品は強靭で信頼性が高く、幅広く機械構造部品に使用され他に変えがたい素形材である。

 



▼ 鍛造品の種類

■ 鍛造品の用途

 鍛造品は、あらゆる産業や身近な日常生活の中で貢献しています。自動車では、トラック・バスから軽自動車まで幅広く用いられ、特にF1やラリーなどの過酷な競技には、その使用範囲は更に拡大されます。また競技といえばゴルフトーナメントでも、プロが使用するクラブのヘッドのほとんどは鋳造品ではなく鍛造品が使われています。

用途別
自由鍛造品
型鍛造品
産業機械器具用
 電気材料素材、金型材料
 シャープレード
 圧延ロール、カップリング
 発電機軸、水車軸
 原子炉用ノズル、フランジ
 ※ベアリングレース、フック

 ベアリングレース、フック
 コンベアチェン
 タービンブレード
 フランジ、バルブ

土木建設鉱山機械用
 削岩機部品
 ※大型リング
 コンロッド、クランク軸
 キャタピラーリンク、ギヤ類
 ローラ、ベアリングレース
農機具・漁具用
 耕うん機つめ
 コンロッド、クランク軸
 ギヤ類、ベアリングレース
工 具 用
 のこぎり、かんな、はし
 のみ、包丁、石工用具 
 モンキレンチ、スパナ
 パイプレンチ、ペンチ
自 動 車 用
 ※リングギヤ
 ※ベアリングレース
 コンロッド、クランク軸
 ロッカーアーム、ギヤ類
 等速ジョイント、クラッチハブ
 ナックル、リヤーアスクル
 フロントアスクル
 ベアリングレース
 タイヤホイール
産業車両自転車用
 運搬機用フォーク
 自動車用クランク
 ナックル、リヤーアスクル
 ガイドローラ
鉄 道 用
 主軸、歯車、レバー類
 主軸、※タイヤ
 タイプレート、クロス
 コンロッド、クランク軸
港 湾 船 舶 用
 コンロッド、クランク軸
 ギヤ類、フック、フランジ
 コンロッド、クランク軸
 ギヤ類、ベアリングレース
その他の用途
 航空機部品
 航空機部品

 産業機械部品、道路、建物の築機部品、汎用部品

 自動車部品用

 建設機械用部品

 自由鍛造による非量産大型重要部品

       (鍛造部品写真提供:JFA)


▼ 鍛造方法

■ 自由鍛造

 自由鍛造とは、金属材料を適当な高温に加熱し、プレスまたはハンマを用いて、その上下金敷間で力を加えて鍛造加工を行うことです。鍛伸すえ込み、穴あけ、穴広げ、展伸、せぎりなど鍛造の基本作業をそれぞれ製品の使用目的、用途などに応じて組み合わせて鍛錬、成形を行います。
 大型鍛造品や、多種少量品で金型の使用に適さないものの生産に適用します。

 「自由鍛造の目的
 
 1】 内部の欠陥を癒着させる

 2】 需要家の要求する素材強度を確保する
 3】 適当な形状にする

※上記の目的を達成するため、鍛錬比が重要です

■ 型鍛造

 型鍛造は、鍛造機械に型彫された上下1組の金型を取り付け、この型内に素材をいれて圧縮加工する方法です。同一形状の製品を多数製造する場合に採用され、寸法精度が高く、複雑なものまで成型加工を迅速に行うことが出来る生産性の高い方法です。しかし、金型製作に手間と経費がかかるので、製品個数の多い場合に型鍛造を採用します。型鍛造の主要生産方式としては、ドロップハンマによる鍛造プレスによる鍛造があります。

 



▼ 素形材生産量の推移

素形材品目別生産量の推移

鍛工品を含む素形材総生産量は、1970年(昭和45年)888万トンでしたが、2007年(平成19年)には1,052万トンとなりました。素形材総生産量に占める鍛工品の割合は10%から25%に躍進しています。

グラフ出所:経済産業省「機械統計」「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計」月報・年報の統計数字より、当組合にて作成

 

素形材産業の業種構成


  グラフ出所:近畿鍛工品事業協同組合    

▼ 鍛工品製造の現況

鍛工品の生産

鍛工品の2007年(平成19年)の生産実績は、265万トンで過去最高を記録しました。
1970年(昭和54年)、鍛工品の生産量は86万トンで、粗鋼生産量(9300万トン)の約1%でしたが、現在、生産実績は粗鋼生産量の約2%を占めています。

暦年
西暦
鍛工品(万トン)
粗鋼(万トン)
鍛工品占有率(%)
平成元年
1989
229
10,791
2.12
平成2年
1990
243
11,033
2.20
平成7年
1995
227
10,164
2.23
平成12年
2000
200
10,644
1.88
平成17年
2005
243
11,247
2.16
平成18年
2006
254
11,623
2.19
平成19年
2007
265
12,020
2.20
平成20年
2008
257
11,874
2.16
平成21年
2009
147
8,753
1.70
平成22年
2010
213
10,960
1.94
平成23年
2011
219
10,760
2.04
平成24年
2012
218
10,723
2.03
平成25年
2013
221
11,059
2.00
平成26年
2014
224
11,067
2.02

 

鍛工品用途別生産量の推移

鍛工品生産量は、1970年85万トンから2007年265万トンと過去最高を記録し、3倍にも大幅増加しています。生産量が増加した要因は国内の自動車生産の拡大で、自動車用鍛工品は1970年の31万トン(鍛工品総生産量の37%)から2007年には176万トン(同67%)に達しています。

グラフ出所:経済産業省「機械統計」「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計」月報年報の統計数字より、
        当組合にて作成。
(注)昭和47年統計法の改正により、調査対象事業所が従業者10人以上から20人以上になりました。
(注)平成5年より用途別内訳の区分・名称が変更されました。それ以前の分は変更後の区分に見直しました。

鍛工品製造業の規模

鍛工品製造業の工場数は経産省の統計から平成23年で凡そ約380社、従業者数は約13.800人、生産額は約5740億円、出荷額は約5000億円とみられます。従業員規模が19人以下の工場が全体数の約6割を占めており、逆に100人以上の工場数は1割弱、中間層の20〜99人の工場数が約3割という構成になっています。